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桔梗ヶ原におけるメルロー改植から50年の歩み

桔梗ヶ原におけるメルロー改植から50年の歩み

シャトー・メルシャンのヴィジョンである「日本を世界の銘醸地に」を体現する産地のひとつ「桔梗ヶ原地区」。現在では、日本ワインの銘醸地のひとつとして国内外から高く評価されていますが、1890年(明治23年)にブドウが初めて栽培されてから今に至るまで様々な挑戦や苦悩する日々がありました。

1976年1月、浅井昭吾(元シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー 工場長)が大黒葡萄生産出荷組合のメンバーを集め始まった桔梗ヶ原におけるブドウ栽培方針の一大転換「メルロー改植」から2026年に50周年を迎えます。

本特集ページ「桔梗ヶ原の挑戦と未来-メルロー改植50周年」では、1976年を起点に桔梗ヶ原の歩みを紐解き、未来に向けた想いを1年間を通してお届けいたします。
第1回は桔梗ヶ原地区のテロワールや歴史についてご紹介いたします。

1. Where is Kikyogahara? -桔梗ヶ原地区とは-

長野県の松本盆地の南端・塩尻市に位置する桔梗ヶ原地区。ワイン産地の育成とブランド化を進める長野県の中で、どのような場所なのか、ご紹介します。

信州ワインバレー構想
長野県では2013年に「信州ワインバレー構想」を開始し、県内各地の風土に根ざしたワイン産地の育成とブランド化を進めてきました。本構想は、県内を5つのワインバレーに区分し、それぞれの気候や土壌に適したブドウ栽培とワイン造りを、地域ぐるみで推進する取り組みです。
生産、人材育成、品質評価制度(GI長野)、観光を一体的に展開することで、持続可能な産地形成とブランド力の向上を図り、国内外で評価される「信州ワイン」の確立を通じて、地域経済とワイン文化の発展を目指しています。

ワインバレー構想における桔梗ヶ原地区
桔梗ヶ原地区は、信州ワインバレー構想において最も歴史が深く、ワイナリーの集積度も高い中核産地であり、日本ワインの先進地として位置づけられています。冷涼な気候と礫質土壌を活かし、特にメルローを中心とした高品質なワインの生産を通じて、産地の品質基準形成や技術継承を長年にわたり牽引してきました。
老舗ワイナリーと新興ワイナリーが共存することで、GI長野の信頼性を支え、信州ワイン全体のブランド力を下支えする基盤産地となっています。

桔梗ヶ原地区とは

2.Terroir of Kikyogahara -桔梗ヶ原のテロワール-

日本有数の個性を備えた赤ワインを生み出してきた「桔梗ヶ原」。そのテロワールは何からつくられているのか、また、メルローの栽培においてどのような意味があるのかを紐解きます。

冷涼な内陸性気候と大きな寒暖差
桔梗ヶ原地区は四方を山に囲まれた内陸部に位置し、年間を通じて降水量が比較的少なく、日照時間に恵まれた気候です。標高約700メートルという高地にあるため、夏季でも夜間の気温が下がり、昼夜の寒暖差が大きくなります。この寒暖差は、ブドウの成熟を緩やかに進めながら、果実に十分な酸と香りの要素を保持させる重要な要因となっています。
一方で冬季には氷点下10度に達する厳しい寒さとなり、ブドウ樹にとっては決して容易な環境ではありません。こうした冷涼で厳しい気候条件は、樹の生育を自然に抑制し、結果として果実の凝縮度や品質の安定につながっています。

冷涼な内陸性気候と大きな寒暖差

扇状地に育まれた礫層を伴う火山灰由来の土壌
桔梗ヶ原は、奈良井川によって形成された扇状地の上に広がる台地で、礫(れき)を豊富に含む土壌が特徴です。礫層の上には火山灰由来の土壌が堆積しており、水はけが非常に良く、降雨後も畑に水が滞留しにくい環境となっています。この優れた排水性により、ブドウの根は地中深くまで伸び、水分や養分を求めて自然に根張りを強化します。
その結果、樹勢が過剰になりにくく、収量が抑えられ、果粒の小さな凝縮度の高いブドウが得られやすくなります。桔梗ヶ原メルローに見られる引き締まった果実の風味や、しなやかな構造は、こうした土壌条件と密接に結びついています。

扇状地に育まれた礫層を伴う火山灰由来の土壌

メルローに適した環境
冷涼な気候と水はけの良い礫質土壌という組み合わせは、もともと桔梗ヶ原にとって大きな挑戦でもありました。特にメルローは、成熟期の気温や収穫タイミングが品質を大きく左右する品種であり、この地での栽培には長年の試行錯誤が重ねられてきました。
しかし、改植と栽培技術の蓄積によって、桔梗ヶ原では果実味と酸のバランスに優れ、過度なアルコール感に偏らない、端正で熟成ポテンシャルを備えたメルローが生み出されるようになります。
桔梗ヶ原のテロワールは、力強さよりも調和や品格を重んじるスタイルを育み、日本独自のメルロー像を形づくってきました。

メルローに適した環境

テロワールが形づくる桔梗ヶ原の個性
桔梗ヶ原のテロワールは、単なる自然条件の集合体ではなく、そうした環境と向き合い続けてきた生産者の経験と知恵によって磨かれてきたものです。厳しい気候条件の中で選び抜かれた区画、改植を重ねた樹齢、栽培技術の蓄積が重なり合い、この地ならではのワインの個性が形成されています。
桔梗ヶ原のメルローが国内外で評価されてきた背景には、明確で一貫したテロワールの存在があります。それは土地・気候・土壌、そして人の営みが積み重なって生まれた、桔梗ヶ原ならではの表現と言えるでしょう。

テロワールが形づくる桔梗ヶ原の個性

3.History of Kikyogahara -桔梗ヶ原の歴史-

桔梗ヶ原では明治後期からブドウ栽培と醸造が始まり、当初は冷涼地で育てやすい生食用やナイアガラ/コンコードなどアメリカ系品種が中心でした。ところが1970年代に国内の需要が甘味果実酒優位から「果実酒(本格ワイン)」優位へと逆転し、品質志向の高まりとともに、桔梗ヶ原の寒暖差と礫質土壌が欧州系品種に適することが改めて注目されます。
この市場変化を背景にメルローへの改植と栽培研究が本格化。試行錯誤を重ねた成果が実を結び、1990年代以降は国内外の評価を着実に獲得し、日本を代表するメルローの産地としての地位を築きました。

-桔梗ヶ原の歴史-
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